こんにちは。このブログを運営している「たか」です。
私は四国八十八カ所のお遍路を歩いて巡り、順打ちと逆打ちを合わせて二周しました。
お遍路の話をすると、よく聞かれるのが
「お遍路の目的って何ですか?」
「どうして始めたんですか?」
「何を求めて歩くんですか?」
という質問です。
結論から言うと、お遍路の目的とは、弘法大師・空海の足跡をたどりながら四国八十八カ所を巡礼し、信仰・修行・人生の再生・観光など、個人の思いに基づいて行われる巡礼行為のことです。
願掛けや供養のために歩く人もいれば、自分を見つめ直したくて歩く人もいます。
健康のため、人生の節目として、ただ一度やってみたかったから――そんな理由の人もいました。
歩き遍路の途中では、身体にハンディを抱えながら巡礼を続けている方にも出会いました。
本記事では、お遍路の目的を実体験とともに分類し、その本質についてわかりやすく解説します。
お遍路の目的が生まれる背景(発心とは)
私がお遍路を始めたのは、20代の頃でした。
きっかけはいくつかありますが、順を追ってお話ししたいと思います。
お遍路を始めたきっかけ①:偶然の出会い
四国を車で旅していた私は山道を走っている途中、白装束に身を包み杖をついたお遍路さんを見かけました。車でも次の町まで1時間ほどかかるような場所を歩いている姿に驚き、「こんな山深い道を本当に巡っている人がいるのか」と強く印象に残り、お遍路を初めて意識するきっかけとなりました。

お遍路を始めたきっかけ②:興味と探求心
あの時に見かけたお遍路さんの姿が、ずっと心に残っていました。
そして次第に、「お遍路とは一体どんなものなのだろう」と強く興味を持つようになりました。
本やインターネットで調べることもできましたが、本当に知るためには、自分で歩いてみるしかない。
そう思い、私は実際にお遍路を始めることを決めました。
仕事に支障がでないよう、長期休暇や連休を利用しながら巡る「区切り打ち」を計画しました。
春、夏、冬、そして翌年の春――。
一年をかけて、すべての札所を歩いて巡る計画です。
お遍路を始めたきっかけ③:挑戦・バックパッカー志向
バックパッカーのような旅への憧れも、少しありました。
テントや寝袋を持って、自分の力だけで歩きながら、困難に挑戦してみたい。そんな気持ちです。
自然の中で過ごしながら、自分自身を試してみたいという思いもありました。
四国には、熊のような猛獣がほとんどいないため、野宿もしやすく、少ないリスクで旅を始めることができます。

歩いてわかったお遍路の意味と心境の変化
いろいろ理由はありましたが、一言でまとめるなら、私の場合は「興味本位」がいちばん近いと思います。
しかし、実際に歩いてみると、旅の途中で考え方や感じ方は大きく変わっていきました。
お接待をいただいたり、道中で出会った人たちに助けてもらったりして、人の温かさを何度も感じました。
また、大雨の中を歩いたり、険しい山道を越えたりする経験を通して、自然の厳しさと同時に、その大きさへの畏敬の気持ちも強くなりました。
そうした経験の中で、自分自身の弱さや、人間の弱さにも気づかされました。
そして、人と人との縁をつなぎ続けている弘法大師の存在を、強く感じるようになりました。
この巡礼は、決して自分一人の力だけで歩き切れたものではありませんでした。


お遍路の目的は人それぞれ(実例紹介)
ここでは、私が歩き遍路の途中で出会ったお遍路さんたちのさまざまな目的をご紹介します。すべてを書き尽くすことはできませんが、その中でも特に印象に残った方々を取り上げていきます。
お遍路の目的①:信仰・修行
お遍路の原点ともいえる目的で、弘法大師への信仰や功徳を求めて歩く人が多い伝統的な巡礼の形です。
公認先達を目指して歩くお遍路さん
公認先達を目指して巡礼を続けるお遍路さんです。お遍路を重ねるごとに先達の階位が上がるため、その成長や達成を目標の一つにして歩いている方もいます。
団体遍路で広がるお接待の輪
岡山の寺院の住職と檀家約30名の団体遍路です。住職からのアイスのお接待をきっかけに、檀家さんからも次々にお菓子を頂き、人のエネルギーが広がる力を感じました。
家族4人で歩く、ベトナムからのお遍路さん
ベトナムから来たご家族4人のお遍路さんです。ご夫婦と小さなお子さん2人で、大きなリアカーに家財道具を積み、信仰心を胸に巡礼を続けていました。
仏教を学ぶ学生遍路
大学で仏教を学ぶ20代前半の学生お遍路さんです。頭を丸め、真剣な表情で歩く姿から、学びだけではない強い信仰心や覚悟が伝わってきました。
両手を支えられながら参拝していた高齢の女性
徳島のお寺で、両手を支えられながら参拝されている高齢の女性の姿を見かけました。ご本人の思いまでは分かりませんが、その姿はとても印象的で、深く心に残りました。
親族の葬儀のために車で巡るお遍路さん
親族の葬儀に間に合わせるため急きょ車でお遍路を始めたそうです。大変だったものの、無事間に合ったと話されていました。
お遍路の目的②:人生の再出発・内省
人生の節目や悩みを抱え、自分自身と向き合いながら歩くことで心の整理を求める人が多い現代的な目的です。
親子関係に悩みを持った70代女性
善根宿でご一緒した70代の女性は、お子さんとの関係や育て方について悩みを抱えていると話してくださいました。荷物の入ったカートを引きながら、自分と向き合うように歩き遍路を続けている姿が印象に残っています。
人生を見つめ直す若者遍路
善根宿で二日連続お会いした20代の男性は、以前海外で美容師として働いていたそうです。事情があって帰国し、これからの人生を考えるためにお遍路を始めたと話してくれました。人生の岐路の中で歩く、その姿が印象的でした。
聴力を失っても前を向く遍路さん
小学生の頃の体罰が原因で聴力を失ったという遍路経験者にも出会いました。それでも遍路を通じて新しい人生観を見つけ、仕事で積み重ねてきた成功体験を穏やかに語る姿が、とても印象に残っています。
人生を模索するお遍路さん
四国の旅館で働いていたものの、女将との衝突をきっかけに仕事を辞めた、お遍路経験者にも出会いました。話をして、自分のこれからを静かに見つめ直している様子が印象的でした。
お遍路の目的③:挑戦・健康・記録
自分の体力への挑戦や健康維持、達成記録として歩くなど、スポーツや自己挑戦としての側面を持つ目的です。
ロードバイクで巡る70代男性
善根宿でご一緒した70代の男性は、ロードバイクでお遍路を巡っていました。以前は歩き遍路も経験されており、今回は自転車で挑戦しているとのこと。ヘルメットに白装束姿で、元気に巡礼を続ける姿が印象的でした。
一日50km歩く75歳男性
善根宿でご一緒した75歳の男性は、1日に最大50kmほど歩く健脚の持ち主でした。気候の良い時期に毎年お遍路を続けており、今回で10回目ほどになるそうです。引き締まったふくらはぎは、まるでサラブレッドのように黒光りしていました。
人懐っこいゲーム業界のお遍路さん
宿で出会った45歳の男性は、ゲーム関係の仕事をしていると話していました。歩いていると疲れた様子に見えるらしく、「よく声をかけてもらって車に乗せてもらうんですよ」と笑いながら話していたのが印象的でした。ユーモアのある、親しみやすいお遍路さんでした。
登山家のようなお遍路さん
野宿先で一緒になった30代の男性は、20kgはありそうな大きなリュックを背負い、鍛え抜かれた足が印象的でした。趣味は登山で、「遍路もちょくちょくやっています」と自然体で話していた姿が忘れられません。最後は一緒に大窪寺で結願しました。
愛媛のお寺で何度かお会いしたお遍路さん
30代の男性で、区切り打ちで連休を利用しながら歩いているとのことでした。なぜお遍路をしているのか尋ねると、「小さい子どもに威厳を示したい」と話していました。
大学生女性2人組のお遍路さん
白装束をきちんと身にまとった、大学生の女性2人組でした。友人同士で巡るスタイルもあり、楽しみながらもしっかりと巡礼に向き合っている姿が印象的でした。
お遍路の目的④:海外からの巡礼
文化や宗教を超えて日本の巡礼文化に触れることを目的に、海外から訪れる人々による多様なスタイルの遍路です。
支え合いながら歩く夫婦遍路
善根宿で出会ったアメリカ人のご夫婦は、ゆっくりと歩きながらお遍路を続けていました。奥さんは足の調子があまり良くない様子でしたが、夫婦で支え合いながら巡礼を続ける姿が印象に残っています。
雨の日に出会ったフランス人のお遍路さん
土砂降りの雨の日、宿で出会ったフランス人遍路の男性。女将さんとの会話を簡単に通訳し、食事がなかったため一緒にスーパーへ行っておにぎりを紹介した思い出があります。
自分のペースで歩く欧州人遍路
トレッキング好きの欧州人のお遍路さんにも出会いました。山道は得意でも、長いアスファルト道は苦手だそうで、時にはバスも利用しながら、自分のスタイルで巡礼を続けていました。
オーストラリア人の20代女性
オーストラリアから来た20代の女性で、バックパック一つで一人歩き遍路をしていました。異国の地を一人で歩くその姿に、自然と敬意を感じました。
お遍路の目的⑤:困難を超える巡礼
身体的なハンディキャップや困難を抱えながらも、一歩ずつ歩み続けることで人生や信念と向き合う巡礼です。
障がいを越えて歩くお遍路さん
高知県では、幼少期に小児麻痺を患ったというお遍路さんにも出会いました。歩行にも支障がある中で、「すべての行程を自分の足で歩いてきた」と静かに話していた姿が心に残っています。
全盲で歩くお遍路さん
白杖を突きながら歩く、全盲のお遍路さんにも出会いました。すれ違いざまに互いに一礼し、しばらくして振り返ると、相手もこちらを振り返っていました。目は見えなくても、心で周囲を感じ取っているように思えた瞬間でした。
お遍路と歴史・著名人の関わり
ここでは、遍路を巡ったとされる著名人を紹介します。
空海

空海は言わずと知れたお遍路の祖であり、その修行の足跡を辿ること自体が遍路の大きな目的の一つです。彼の歩んだ道を追い、霊的な力を感じ取ることを目的とする人もいます。意識していなくても、その思いは多くのお遍路さんの中に潜在的に宿っているものだと感じます。空海の遍路は、「修行」という言葉が最もよく当てはまります。
衛門三郎

衛門三郎は、かつて空海に対して無礼を働いたことを悔い、その詫びとして四国の地を巡り続けたと伝えられる人物です。その行脚が、お遍路の起源の一つとして語られることもあります。彼の遍路の目的は、「懺悔」という言葉が最もふさわしいかもしれません。
真念
江戸時代の僧で、四国遍路を広めた人物として知られています。遍路道や札所の案内をまとめたとされ、現在の巡礼文化の基礎を支えた存在です。実際に歩きやすい遍路の形を整えた功績から、遍路の発展に大きく関わった人物といえます。彼の遍路の目的は、「伝導」といえるでしょう。

真念著:四国遍路道指南の挿絵
種田山頭火

自由律俳句で知られる俳人・種田山頭火は、各地を放浪する中で四国遍路も歩いた人物として知られています。酒に溺れるなど不安定な生活を送りながらも、その旅の背景には「過去を清算したい」という思いがあったとも言われています。山頭火にとって遍路は単なる旅ではなく、自身の人生そのものを映し出す行為だったといえるでしょう。
お遍路を巡ったその他の著名人
近年では、元内閣総理大臣の菅直人氏や、元プロ野球選手の清原和博氏なども、四国遍路を経験した著名人として知られています。菅直人氏は、年金未納問題などで政治的に注目を集めた時期を経てお遍路に出たとされ、その背景から「懺悔の旅」として語られることもあります。
お遍路の注意点とトラブル事例
残念ながら、お遍路の本来の目的とは異なる形で利用しようとするケースも、ごく一部ではありますが存在します。ここでは実際に耳にした事例を紹介します。
転売目的
納経帳や錦札などを転売目的で集める人がいると言われています。本来は信仰や巡礼の証として受け取るものですが、御朱印を1度に多数集めたり、納札箱から錦札を持ち出すといった行為が問題になることもあります。現在では防犯カメラの設置など、対策が進んでいる札所も増えています。納め札には名前や住所などの個人情報が含まれるため、本来は厳重に扱うべきものです。
お遍路姿を利用した窃盗など
善根宿の運営者などから、お遍路を装った人物による窃盗被害があったという話も聞かれます。こうした行為は極めて残念なものであり、お遍路の精神とは相容れないものです。
お遍路の目的のまとめ(結願という共通点)
お遍路の目的は「これ」と一つに決められるものではなく、人によって大きく異なります。信仰や供養、人生の見直し、健康・挑戦、あるいは単なる興味から始める人まで、その背景はさまざまです。
実際に歩いてみると、旅の中で出会う人々もまた多様であり、それぞれが自分なりの理由を持って巡礼を続けています。そこには年齢や国籍、身体的な状況を超えた多様な人生の物語がありました。
しかし共通しているのは、すべての人が最終的に「結願(88カ所を巡り終えること)」という同じゴールを目指しているという点です。
目的は違っても、同じ道を歩き、同じ場所で手を合わせる。その中で自然と生まれるつながりや助け合いこそが、お遍路という巡礼の本質的な魅力だと言えるでしょう。
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