37番岩本寺から38番金剛福寺までは約80kmに及ぶ、四国遍路の中でも最長の区間。17日目は土佐佐賀温泉を出発し、海沿いの道を進みながら四万十川を目指した。真夏の強い日差しと暑さに苦しみながらも歩き続け、夕方には四万十大橋を渡り、ドライブイン水車に到着。40km以上歩き、野宿した。
行程表
- 6:30出発
- 土佐佐賀温泉
- 土佐佐賀
- 上川口
- 大方
- 四万十大橋
- 新伊豆田トンネル
- 18:30ドライブイン水車
野宿

朝の準備
8月11日、晴れ。全体では17日目になるが、区切り打ちでは3日目。少しずつ体がお遍路に順応してきたように感じる。
前日は安和から岩本寺を参拝し、その後、土佐佐賀温泉まで歩いて野宿した。今日は天気も良さそうで、まさに台風一過の一日になりそうだ。気温もかなり上がるだろう。
早朝、出発の準備をしていると、昨晩、遍路小屋で一緒になった青年も起きてきた。これから先も、またどこかで会うかもしれない。お互いの無事を祈り、6時30分、土佐佐賀温泉を出発した。

37番岩本寺から38番金剛福寺へ
37番岩本寺から38番金剛福寺までは、約80kmにも及ぶ長距離区間だ。24番最御崎寺までの道のりよりも長く、88ヶ所の中でも最長の区間になる。
しかも、38番金剛福寺は四国の最南端にある足摺岬に位置している。車でもアクセスに時間がかかる場所で、歩いて向かうとなれば、それなりの覚悟が必要だ。
弘法大師も、よくこのような遠く険しい場所まで足を運んで修行されたものだと、あらためて驚きと敬意を感じる。
とはいえ、徳島から歩いてきたお遍路さんなら、よほどのことがない限り、この区間も歩き通せるはずだ。
今日は、とにかく少しでも距離を稼ぐことにした。宿泊地はあえて決めず、歩きながらその日の状況を見て決めることにする。
土佐佐賀から海沿いへ
土佐佐賀温泉を出ると、しばらくは山あいの道が続く。
早朝の伊与喜川沿いの国道は、緑に囲まれた景観の良い道だった。ただ、湿度が高く、歩き始めて間もないのに汗がじわじわと出てくる。
2時間ほど歩くと、山の景色から海の景色へと変わっていった。
海の向こうには、丸い森に覆われた鹿島が見える。島の名前からすると、鹿がたくさん生息しているのだろうか。そんなことを考えながら海沿いの道を進んだ。

佐賀公園でひと休み
しばらく海沿いの国道を歩くと、佐賀公園を通った。
海辺にある広々とした公園で、トイレもあり、芝生のスペースも開放的だ。天候が良ければ、テントを張って野宿する場所としても利用できそうだった。
9時30分、白浜休憩所で休憩
この周辺には海を眺めながら休める場所がいくつかあり、歩き遍路にはありがたい。気温と湿度が高く、背中とバックパックの間に熱がこもってくる。
定期的にバックパックを下ろして体を冷やし、足にも熱がこもらないように靴下を脱いでマッサージする。
夏のお遍路では、距離を歩くことだけでなく、いかに体温を上げないかが重要だと感じた。

暑さとの戦い
11時になると、気温はさらに上昇してきた。日差しが強く、肌が痛く感じるほどだ。
昼食は、途中で見つけたコンビニで購入したおにぎりとサンドイッチ。歩きながら食べた。
それにしても、真夏のコンビニはありがたい。店内に入った瞬間、外とは別世界のような涼しさだった。
上川口の公園で休憩
上川口では海辺の公園を見つけ、給水とトイレ休憩。
水道水を頭からかぶり、汗でびしょ濡れになった白装束も水で洗い流した。冷たい水を含んだ白装束を着ると、ほてった体温が一気に下がっていくのが分かる。

大方から四万十川へ
岩本寺から約32km地点にある大方では、国道を外れて海辺の遍路道を歩くのがおすすめだ。
防砂林を兼ねた松林は風通しが良く、強い日差しも遮ってくれる。さらに、歩道脇の土の道を選べば、アスファルトよりも足への負担を軽減できる。
途中で水道を見つけるたびに、頭から水をかぶった。
夏の歩き遍路では、とにかく体温を下げることが大切だ。
大方を過ぎると、地図上では2つのルートを選べる
一つは国道56号線を進み、四万十市の中心街・中村へ向かうルート。多少の回り道にはなるが、宿泊施設や飲食店が多く、疲れた体を休めるには便利な町だ。
もう一つは、南側の県道を通るルート。こちらは四万十川を最短距離で渡れる一方、宿や飲食店の選択肢は少なくなる。
どちらを選ぶかは、自分の体力や歩き方に合わせて決めればいい。
私は少しでも先へ進みたかったので、最短の県道ルートを選んだ。

16時前、ついに四万十川までやって来た
四万十川は、四国を代表する清流の一つ。河川敷の芝生に腰を下ろし、雄大な自然を眺めながら少し休憩する。
目の前に架かっているのは四万十大橋だ。
先日の台風の影響だろうか、川の水位がかなり高く感じる。氾濫している様子はなく、ひとまず安心した。
今日はここまでで約30km。さすがにかなり疲れている。
そろそろ今日の宿泊地を決めなければならない。地図を広げて探していると、四万十市を抜けてすぐの場所にある「ドライブイン水車」が目に入った。
ここに決めよう。
ドライブイン水車までは、あと約10km。夏の高知は日没が19時頃なので、まだ時間はある。
疲れた体を奮い立たせ、最後のひと踏ん張りでドライブイン水車を目指すことにした。


四万十大橋を渡り、ドライブイン水車へ
四万十川は、南側にある四万十大橋を渡るルートが便利だ。
橋の近くにはコンビニもあり、食料の調達にも困らない。
橋の中ほどまで進むと、視界を遮るものがなくなる。目の前にはダイナミックな四万十川が広がり、その先には高知の山々が連なっている。
長い距離を歩いてきた体にはこたえるが、この景色を見ると少し気持ちが軽くなった。
四万十大橋を渡ると、今度は国道321号線を進む。
国道321号線は、38番金剛福寺のある土佐清水市まで続く道だ。この先のルートが心配なら、基本的には国道321号線を歩けば迷うことはない。
橋を渡ってから川沿いを2kmほど歩くと、道は次第に山の中へ入っていった。
そして、この先に待っているのが新伊豆田トンネルだ。
新伊豆田トンネルを歩く
新伊豆田トンネルは全長約1,600m。歩き遍路の中でも特に印象に残る長いトンネルだ。
歩き遍路を経験した人なら、「長いトンネル」と聞けば、このトンネルを思い浮かべる人もいるかもしれない。
歩道はそれなりの幅があり、歩くこと自体はそれほど怖くない。
ただし、交通量は多い。車が横を通り過ぎるたびに強い風圧を受けるので、菅笠が飛ばされないようにしっかりと押さえながら歩いた。
20分ほど歩き、ようやくトンネルを抜ける。
外へ出ると、高い山々に囲まれた景色が広がっていた。
ただ、山に囲まれているためか、日はすっかり隠れている。辺りは薄暗くなっていた。
「休憩所はまだだろうか」
焦る気持ちを抑えながら、さらに先へ進む。
すると、トンネルを出てすぐのところで、ドライブイン水車が見えてきた。
ドライブイン水車で野宿
18時30分、到着。
ドライブイン水車には広めの駐車場があり、トイレや東屋、自動販売機も設置されている。車で移動する人が休憩するには便利な場所だが、お遍路さんにとってもありがたい環境が整っていた。
敷地内には軽食を取れるレストランもあった。
名前の通り、山から流れてくる小さな沢があり、水車も設置されていた。川のせせらぎが聞こえる、のどかな場所だった。
※現在は沢が埋め立てられ、当時のシンボルだった水車も取り除かれているようだ。
小高い芝生の上に東屋を見つけた。
今日の野宿場所はここに決めた。
さっそくテントを設営し、寝床を整える。
一日中歩いて汗だくになった体を、近くの沢で軽く洗った。沢の水はとてもきれいで冷たい。ほてった体に冷たい水が触れると、たまっていた熱が一気に抜けていくようだった。
19時を過ぎると、辺りはすっかり暗くなった。
空を見上げると、満天の星が広がっている。
テントのそばでぼんやりと今日一日のことを振り返っていると、山の向こうから花火の音が聞こえてきた。
「四万十で花火大会でもやっているのかな」
そんなことを考えながら、夜空を眺めた。
今日は40km以上を歩いた。
明日は38番金剛福寺まで約30km。まだまだ厳しい遍路道が続く。
長い一日だったが、まずは無事にここまで来られたことにほっとした。




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