四国八十八ヶ所には、さまざまな仏さまが御本尊として祀られています。その中でも地蔵菩薩は、古くから人々に親しまれてきた仏さまの一人です。
地蔵菩薩は、子どもや旅人を守る仏さまとして知られているほか、亡くなった人や苦しみの中にいる人を救う仏さまとしても信仰されています。
四国八十八ヶ所では、第5番地蔵寺、第19番立江寺、第20番鶴林寺、第25番津照寺、第37番岩本寺、第56番泰山寺の6ヶ所で、地蔵菩薩が御本尊として祀られています。第5番は勝軍地蔵菩薩、第19番は延命地蔵菩薩、第25番は楫取地蔵として知られる延命地蔵菩薩など、それぞれ特徴があります。
この記事では、地蔵菩薩とはどのような仏さまなのか、どんな姿をしているのか、御利益や御真言、そして地蔵菩薩を御本尊とする四国八十八ヶ所の6ヶ所の札所について、わかりやすく紹介します。
地蔵菩薩とは?
地蔵菩薩(じぞうぼさつ)は、仏教の中でも特に人々に身近な存在として信仰されてきた菩薩です。
「地蔵」という名前には、大地がすべてのものを受け入れ、育むように、地蔵菩薩が広い慈悲の心で人々を救うという意味が込められています。
地蔵菩薩は、特に**六道(ろくどう)**のすべての世界に現れて、苦しんでいる人々を救う仏さまとされています。
六道とは、仏教で説かれる、
- 地獄道
- 餓鬼道
- 畜生道
- 修羅道
- 人道
- 天道
という6つの世界のことです。
地蔵菩薩は、どのような世界に生まれた人であっても見捨てることなく救おうとする、慈悲の仏さまとして信仰されてきました。
地蔵菩薩はどんな姿をしている?
地蔵菩薩は、僧侶のような姿で表現されることが多い仏さまです。頭を丸め、袈裟を身につけ、手には**錫杖(しゃくじょう)や宝珠(ほうじゅ)**を持っている姿がよく知られています。錫杖は、先端に輪が付いた杖です。地蔵菩薩が六道を巡りながら人々を救う姿を象徴するものとも考えられています。
もう一方の手に持つ宝珠は、願いをかなえる宝の珠とされ、地蔵菩薩の慈悲や救いを象徴しています。
また、地蔵菩薩にはさまざまな姿や呼び名があります。四国八十八ヶ所でも、勝軍地蔵、延命地蔵、楫取地蔵など、札所によって異なる地蔵菩薩が祀られています。
子どもの成長や健康 / 旅の安全 / 災難除け / 延命長寿 / 安産 / 亡くなった人の供養 / 苦しみや迷いからの救い
御影
おん かかかび さんまえい そわか
地蔵菩薩と六道
地蔵菩薩を理解するうえで重要なのが「六道」です。
仏教では、人は生まれ変わりを繰り返す中で、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天という六つの世界を巡ると説かれています。
地蔵菩薩は、その六道すべてに現れて人々を救う仏さまとされています。
そのため、地蔵菩薩は特定の人だけを救うのではなく、苦しみや迷いの中にいるすべての人に寄り添う仏さまとして信仰されてきました。
道端のお地蔵さまを見かけることが多いのも、こうした地蔵菩薩の身近な存在としての信仰と関係しています。
地蔵菩薩の御利益
地蔵菩薩は、さまざまな願いを受け止めてくれる仏さまとして信仰されています。
代表的なものとして、次のようなものがあります。
- 子どもの成長や健康
- 旅の安全
- 災難除け
- 延命長寿
- 安産
- 亡くなった人の供養
- 苦しみや迷いからの救い
特に地蔵菩薩は、子どもを守る仏さまとして広く信仰されています。
また、旅人を守る仏さまとしての信仰もあり、昔から道端や峠などに地蔵菩薩が祀られてきました。
お遍路との関係でも、旅の安全を願う仏さまとして、地蔵菩薩は親しみやすい存在といえるでしょう。
地蔵菩薩を御本尊とする四国八十八ヶ所の札所
四国八十八ヶ所の中で、地蔵菩薩を御本尊とする札所は6ヶ所あります。
徳島県
第5番札所 地蔵寺
第5番札所の地蔵寺は、寺名の通り地蔵菩薩を御本尊とする札所です。
御本尊は延命地蔵で、胎内仏として勝軍地蔵菩薩が納められていると伝えられています。弘法大師が勝軍地蔵菩薩を彫り、本尊として安置したことが寺の始まりと伝えられています。
地蔵寺の奥の院には五百羅漢があり、札所を訪れた際にはこちらも見どころの一つです。

第19番札所 立江寺
第19番札所の立江寺は、延命地蔵菩薩を御本尊としています。
寺伝によると、行基菩薩が光明皇后の安産を祈るために「子安の地蔵」を彫造したことが、立江寺の御本尊の由来とされています。
その後、弘法大師が大きな延命地蔵菩薩を彫造し、その胎内に行基菩薩作の地蔵菩薩を納めたと伝えられています。
立江寺は「阿波の関所」とも呼ばれ、お遍路の中でも重要な札所の一つです。

第20番札所 鶴林寺
第20番札所の鶴林寺は、地蔵菩薩を御本尊としています。
寺伝によると、弘法大師が山中で白鶴に守られている小さな黄金の地蔵菩薩を見つけ、その姿を見て地蔵菩薩像を彫造したと伝えられています。
現在の御本尊には、その小さな黄金の地蔵菩薩が胎内に納められているとされています。
標高約470mの山上に位置する鶴林寺は、山道を歩いて参拝するお遍路にとっても印象的な札所です。

高知県
第25番札所 津照寺
第25番札所の津照寺は、**地蔵菩薩(楫取地蔵)**を御本尊としています。
弘法大師が室戸を訪れた際、山の形が地蔵菩薩の持つ宝珠に似ていることから霊地とし、自ら地蔵菩薩を刻んで本尊としたと伝えられています。
御本尊は「楫取地蔵(かじとりじぞう)」とも呼ばれています。
これは、室戸沖で暴風雨に遭った山内一豊が、僧侶に船の舵を取ってもらい無事に港へ入ることができ、その後、津照寺を訪れると御本尊の地蔵菩薩が濡れていたという伝説に由来します。
津照寺は室戸港を見下ろす高台にあり、本堂へ続く石段も特徴的です。

第37番札所 岩本寺
第37番札所の岩本寺は、四国八十八ヶ所の中でも特徴的な札所です。
岩本寺には、不動明王・観世音菩薩・阿弥陀如来・薬師如来・地蔵菩薩の五尊が御本尊として祀られています。
そのため、地蔵菩薩を御本尊とする札所を数える場合には、岩本寺も含めて6ヶ所となります。

愛媛県
第56番札所 泰山寺
第56番札所の泰山寺は、地蔵菩薩を御本尊としています。
寺伝によると、弘法大師がこの地を訪れ、洪水によって苦しむ人々を救うために堤防を築き、土砂加持を行ったところ、満願の日に地蔵菩薩を感得したと伝えられています。
そこで弘法大師が地蔵菩薩像を刻み、寺を建立したとされています。
泰山寺の御本尊である地蔵菩薩は、人々を苦しみから救い、来世へ導く仏さまとして信仰されています。

まとめ
地蔵菩薩は、六道すべてに現れて人々を救う、慈悲深い仏さまとして信仰されています。
子どもの成長や安全、旅の安全、延命、亡くなった人の供養など、さまざまな願いに寄り添う身近な仏さまでもあります。
四国八十八ヶ所では、第5番地蔵寺、第19番立江寺、第20番鶴林寺、第25番津照寺、第37番岩本寺、第56番泰山寺の6ヶ所で地蔵菩薩が御本尊として祀られています。
札所によって、勝軍地蔵、延命地蔵、楫取地蔵など、それぞれ異なる由来や特徴があります。
お遍路で地蔵菩薩を御本尊とする札所を訪れた際には、御本尊のお姿だけでなく、それぞれの地蔵菩薩がどのような願いとともに信仰されてきたのかにも注目してみてください。









コメント