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歩き遍路24日目

歩き遍路 24日目 歩き遍路の記録

歩き遍路24日目は、寒さで眠れず、午前3時に大瀬を出発。夜明け前の暗い遍路道を進み、下坂場峠と鴇田峠を越えて、44番札所・大寶寺を目指した。

道中では同郷のお遍路さんとの出会いや、冬の山道ならではの景色を楽しみながら、午後1時に大寶寺、午後4時30分には45番札所・岩屋寺に到着。八丁坂の険しい山道を越え、最後は古岩屋荘に宿泊した。

寒さと長い道のりに苦労しながらも、二つの札所を巡ることができた、充実した一日だった。

行程表

12月28日 くもり
  • 3:00
    出発
    1. 大瀬
    2. 田渡薬師堂
    3. 下坂場峠遍路道
    4. 二名
    5. 鴇田峠
    6. 久万高原町
  • 13:00
    44番 大寶寺
    1. 八丁坂
  • 16:30
    45番 岩屋寺
  • 18:00
    国民宿舎 古岩屋荘

    宿泊

歩き遍路 24日目

夜明け前の遍路道

12月28日、曇り。

歩き遍路24日目。昨日は卯之町から内子を越え、大瀬の東屋で野宿した。しかし、夜の寒さに耐えきれず、午前3時、歩き始めることを決断した。

周囲は当然、真っ暗で何も見えない。

大瀬からはしばらく国道379号線の一本道が続くため、道を間違える心配はなさそうだ。こんなときに役立ったのが、小型のLEDライトだった。足元や周囲を時折照らし、崖などの危険な場所がないか確認しながら進んでいく。

歩き始めて15分ほどすると、体が温まってきた。数時間前までは寒さで眠ることもできなかったのに、歩き始めると体が温まってくる。人体の不思議さを感じずにはいられなかった。

山々に囲まれた国道は、まだ闇の中に沈んでいる。聞こえてくるのは、自分の杖が地面を突く音ばかり。時折、風が森の葉を揺らす音がする。さらに、聞いたこともないような獣の鳴き声が、闇の向こうから響いてくる。

それでも、不思議と恐怖心は湧かなかった。

それ以上に不思議だったのは、自分のずっと後ろに弘法大師がついてきてくださっているような気配を感じたことだ。

黙って見守ってくださる弘法大師。その気配を感じると、何とも言えない安心感に包まれた。

同行二人。

私は後ろを振り返らなかった。ただ、前を向いて歩き続けた。

44番大寶寺を目指して

今日の目的地は、44番札所の大寶寺だ。

内子から大寶寺へ向かうルートはいくつかあるが、代表的なのは鴇田峠(ひわたとうげ)を越える道だろう。標高800メートルほどの峠を越えるため、体力はもちろん、食料や飲み物の準備も欠かせない難所である。

峠を越えた先には久万高原町がある。飲食店や宿泊施設も点在しているため、できれば一気に越えてしまいたい。

ルート上で注意が必要なのが、内子から15キロほど進んだ、小田川と田渡川が合流する地点だ。鴇田峠を目指すには、ここで左に曲がり、国道379号線を進まなければならない。

幸い、私がこの地点に差しかかる頃には、周囲がぼんやりと明るくなり始めていた。看板を確認できたので、迷うことなく先へ進むことができた。

田渡薬師堂でひと休み

時刻は午前8時前。

田渡川に沿ってしばらく歩いていると、小さなお堂が目に入った。田渡薬師堂だ。

近くには小さな小屋とトイレがあったので、ここで休憩することにした。

午前3時に歩き始めてから、すでに5時間近くが経過している。トイレを済ませ、昨日コンビニで買っておいたおにぎりやサンドイッチを食べながら、地図を広げてこの先の行程を確認した。

田渡薬師堂の休憩所

田渡薬師堂から大寶寺のルート

田渡薬師堂から大寶寺までは、あと約15キロ。標高はおよそ200メートルから、徐々に上がっていく。ここから先は、登りが次第にきつくなることが予想された。

鴇田峠への分岐にも注意が必要だ。この先の落合トンネルを抜けたら、右手の県道42号線に入る。

お遍路さんとの出会いとお接待

地図を見ながらあれこれ考えていると、一人の歩き遍路さんが通りかかった。

「おはようございます」

挨拶を交わし、少し話をしてみると、なんと私と同じ町の出身の方だった。さらに、お接待として饅頭を二ついただいた。

年の瀬も迫るこの時期、山深い土地で同郷の遍路さんに出会うとは。

これも弘法大師が結んでくださったご縁なのだろう。

冬の山道を進む

田渡薬師堂を出発し、予定どおり落合トンネルを抜けて県道42号線へと入った。

道幅は徐々に狭くなり、登りも次第にきつくなっていく。路肩では、枯れたススキが風に揺れていた。冬ならではの寂しげな風景だ。

空は厚い雲に覆われ、ときおり、みぞれまで降ってくる。寒さが身に染みるため、ネックウォーマーを顔まで引き上げて防寒した。

大寶寺遍路道
大寶寺遍路道

下坂場峠遍路道

午前9時30分。

下坂場峠遍路道に入った。

ここは、曲がりくねった車道をショートカットできる便利な遍路道だ。針葉樹の林の中を抜ける道は、冬の閑散期にもかかわらず、よく整備されていて歩きやすい。

歩き遍路をするなら、ぜひ利用したい道の一つだと思う。

下坂場峠遍路道
下坂場峠遍路道

二名地区を抜けて

下坂場峠を越えると、二名地区に入る。

標高約500メートルに位置するこの地区には、二名川の谷間にわずかな平地が広がり、その周囲に田畑や集落が点在していた。

大寶寺までは、あと約8キロ。

静かな山あいの集落を東へと抜けると、いよいよ鴇田峠への道が始まる。

鴇田峠を歩く

鴇田峠への道は、しばらくアスファルトが続いた。その先から未舗装の山道に入る。

個人的には、未舗装の道のほうがアスファルトよりもクッション性があり、足への負担が少なく感じられる。土の道を踏みしめながら、一歩ずつ登っていった。

周囲には、ところどころ雪が残っている。

標高が上がってきたことを、改めて実感した。

鴇田峠遍路道

だんじり岩

鴇田峠の遍路道で、特に印象に残ったのが「だんじり岩」だ。

平らで大きな岩が露出しており、その広さは畳10畳ほどもありそうだった。

そばにある説明板によると、修行中の弘法大師がこの地を訪れた際、空腹と疲労から腹を立ててしまったという。そして、そんな自分を戒めるために、この岩の上で地団駄を踏んだと伝えられている。

弘法大師でさえ腹を立てることがあるのなら、凡人の私が腹を立てることがあっても仕方がない。

そんなことを思ったのを覚えている。

鴇田峠の歴史

午前11時。

鴇田峠の看板が立つ広場に到着した。おそらく、ここが峠なのだろう。

近くのベンチに腰を下ろし、しばらく休憩した。

説明板によると、鴇田峠は1950年頃までは街道として栄えていたそうだ。道中には茶屋もあり、行き交う人々が疲れを癒やす場所になっていたという。

これまでの遍路道でも、かつては多くの人が行き交いながら、今ではひっそりと静まり返っている道をいくつも歩いてきた。

そうした場所に立つたび、いつも寂しさを感じる。

かつての賑わいを想像する一方で、時代とともに人の往来が減り、道が静かに役目を終えていく。その姿には、どこか物悲しいものがあった。

鴇田峠
鴇田峠

鴇田峠休憩所

鴇田峠を越えると、ようやく下り坂が続く。

ところどころ路面が凍結していたため、足を滑らせないよう歩幅を狭くし、慎重に下っていった。

しばらく進むと、休憩所を見つけた。トイレも備わっており、険しい峠を越えたあとにひと息つける、ありがたい場所だった。

鴇田峠休憩所
鴇田峠の積雪と凍結した道

久万高原町に到着

休憩所を過ぎると、舗装路の先に民家が見えてきた。

久万高原町に到着だ。

久万高原町は、南北に流れる久万川に沿って南北に長く広がる町だ。国道沿いには飲食店やコンビニもあり、札所を巡る途中に立ち寄るには便利な場所だった。

この先には、44番札所の大寶寺だけでなく、次の45番札所・岩屋寺も待っている。今後の行程を考え、コンビニで食料を調達しておいた。

久万高原町から大寶寺までは、さらに薄暗い林の中を歩いていく。登り坂もあったが、ここまでの山道と比べれば、それほど大変ではなかった。

44番札所・大寶寺を参拝

午後1時、44番札所・大寶寺に到着した。

43番札所・明石寺から約70km。ここまで歩くのに、約1日半かかった。

大寶寺は、四国八十八ヶ所のちょうど半分にあたる44番札所だ。ここまで歩いてきた道のりを思うと、特別な達成感が込み上げてきたことを覚えている。

大寶寺でまず目を引いたのは、山門の両脇に掲げられた巨大な二足のわらじだった。あまりの大きさに驚いた。これほどのわらじを履きこなせるのは、奈良の大仏くらいではないだろうか。

大寶寺は、想像していたとおり、山々に囲まれた厳かな雰囲気の漂うお寺だった。

境内に入ると、お堂の近くには線香のよい香りが漂っていた。その香りに包まれていると、今にも仏様が降臨しそうな、神聖な空気を感じた。

大寶寺
大寶寺
大寶寺

45番札所・岩屋寺を目指して

大寶寺の次は、45番札所・岩屋寺だ。

岩屋寺は大寶寺から東へ約8キロ、更に山深い場所に位置している。道中には「八丁坂」という難所があり、歩き遍路にとっては険しい道のりが待ち受けている。

時間的には、今日中に岩屋寺を参拝することは十分に可能だった。しかし、問題はその後の宿泊地だ。

昨日は山あいの東屋で野宿を試みたものの、寒さでほとんど眠ることができなかった。さらに山深いこの場所で野宿をするのは、今の装備では到底無理だろう。

そこで、地図を見ながら周辺の宿を探し、電話をかけてみた。幸い、岩屋寺に近い古岩屋荘で予約が取れた。

これで宿の心配はなくなった。今日の行程も決まったところで、岩屋寺を目指して歩き始めた。

大寶寺から岩屋寺へは、県道12号線を東へ進んでいく。一見すると普通の車道だが、意外と起伏が多く、じわじわと体力を削られる。油断せずに歩きたい道だ。

この県道沿いには、昔からお遍路さんを受け入れてきた民宿が点在している。岩屋寺を参拝したあと、次の札所を目指すために再びこの道へ戻ってくることになる。そのため、荷物を宿に預けてから岩屋寺へ向かうお遍路さんも多いようだ。

八丁坂を歩く

大寶寺から約6キロ進んだところに、八丁坂の登山口がある。

登山口の手前にはベンチがいくつか設置されていた。この先には急な登りが待っている。ありがたいことに、ここでひと息つくことができた。

八丁坂の特徴

八丁坂の特徴は、何といっても最初の急登だ。

距離は約600メートルながら、高低差は約160メートル。短い距離で一気に高度を稼ぐ、まさに修行の道と呼ぶにふさわしい坂道である。

急な登りが続く。昔の修行者たちも、この坂を越えて岩屋寺を目指したのだろう。そんな光景を思い浮かべながら、一歩ずつ登っていった。

急坂を登っているうちに体が温まり、汗ばむほどになった。

八丁坂

岩屋寺への参道

ようやく急登を登り切ると、道は尾根伝いに続き、岩屋寺の裏門へと通じている。

しかし、ここからも気は抜けない。道幅が狭く、両側が切れ落ちたナイフエッジのような場所や、木の根がむき出しになった場所もある。足元には十分な注意が必要だ。悪天候で道が滑りやすいときなどは、無理をせず県道を迂回するほうが安全だろう。

八丁坂
八丁坂からの景色
岩屋寺への参道

岩屋寺はもう近い

薄い霧が立ち込める山の中を歩いていると、どこからか鐘の音が聞こえてきた。

岩屋寺はもう近い。

そう思いながら先へ進むと、道の脇にはお地蔵様や不動明王像がいくつも安置されていた。

険しい山道にたたずむ仏像の姿を見ていると、この道が古くから修行の道として使われてきたことが実感できる。山そのものが信仰の場なのだと感じさせられる道だった。

岩屋寺の裏門

45番札所・岩屋寺を参拝

時刻は午後4時30分。

参拝時間を30分ほど残して、なんとか岩屋寺に到着した。ぎりぎりの時間だった。

岩屋寺は、四国八十八ヶ所の中でも特に印象深いお寺の一つだ。

まず目を奪われるのが、本堂のすぐ背後にそびえ立つ巨大な断崖である。人間の手では到底つくり出せない大自然の造形と、長い年月をかけて築かれてきた山岳信仰の歴史。その二つが一体となった景観には、圧倒されるものがあった。

険しい山道を越え、ようやくたどり着いた岩屋寺。その歴史と大自然に圧倒されながら、境内を巡った。

岩屋寺
岩屋寺

法華仙人堂跡

本堂の右手にある岩壁には、はしごが掛けられている。その先には、岩壁のくぼみに設けられた「法華仙人堂跡」がある。

古くから修行の場として伝えられてきた場所で、岩屋寺が山岳霊場であることを強く感じさせる見どころだ。

岩屋寺のはしご
法華仙人堂跡
法華仙人堂跡からの景色

岩屋寺の注意点

岩屋寺は、境内から駐車場のある正門方面へ出るまでにも、たくさんの階段を下らなければならない。正門から参拝する場合も、この点を考慮して時間に余裕を持っておいたほうがよいだろう。

冬の山道を抜けて古岩屋荘へ

午後5時、参拝を終えると、山の中はすでに真っ暗になっていた。

日が沈むと、空気は一気に冷え込んでいく。岩屋寺から古岩屋荘までは約3キロ。県道を歩きながら、行き交う車に注意して先を急いだ。

そして午後6時頃、ようやく古岩屋荘に到着した。

古岩屋荘

古岩屋荘に宿泊

建物に入ると、暖房が効いていて、とても暖かかった。

チェックインを済ませると、まずはロビーのストーブで暖を取った。冷え切った体に、暖房の温かさがじんわりと染み渡る。

古岩屋荘のロビーで印象に残ったのは、吹き抜けの壁いっぱいに描かれたモザイクアートだった。

この地域特有の奇岩が連なる風景を表現したものだろうか。尖った岩の頂上にはお堂が建てられている。険しい岩山と信仰の結びつきが描かれたその作品からも、この地が古くから修行の場であったことが伝わってきた。

古岩屋荘のモザイクアート

一日の振り返り

振り返れば、今朝は寒さで眠ることができず、午前3時から歩き始めた。

夜明け前の暗闇を進み、鴇田峠を越え、44番大寶寺と45番岩屋寺の二つの札所を参拝した。道中では厳しい寒さや急な登り坂に苦しみながらも、同郷のお遍路さんとの出会いや、山深い霊場ならではの景色に恵まれた。

長い一日だった。

昨夜は寒さでほとんど眠れなかったが、今夜は暖かい部屋でゆっくり休むことができる。

明日もまた、遍路道を歩く。

そう思いながら、安心して眠りについた。

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